楽しみに感じる人もいれば、複雑な気持ちを抱える人もいる実家への帰省。
私、実は後者なのですが「私はやれるだけやった」と思いたいのと「離れている時間は割り切って安心して過ごしたい」「なんやかんやで親にはご機嫌でいて欲しい」という思いから可能な範囲で様々なサポートをしたり介護サービスを利用してきました。
この記事では、我が家の実体験と私がもらったアドバイスを振り返りながら「同世代と共有したい」と思ったチェックリスト、役立つモノをご紹介します。
帰省時に自分で見て、話して、電話などでは気づけなかった異変をしっかり感知できれば、心配や問題を家族間で共有して対策したり介護のプロに助けてもらうことができますので、離れて暮らす高齢ご家族のサポートに役立てていただけたら幸いです。
「さぁ、チェックするぞ!」と意気込み過ぎると不快に思われるので、できるだけ自然にコミュニケーションをとりながら観察してみましょう
依存症・持病あり・要介護の父を看取り、現在は脳梗塞の後遺症を抱え要介護になった母をサポートするため二拠点生活中。父の介護と同時期に独居高齢親族の入院サポートや遺品整理の経験もしました。専門職ではありませんが医療・福祉施設にも関わる仕事をしています。
帰省時に異変チェックが大切な理由
「高齢者の様子をチェック」と言うと認知症を疑うイメージが強いですが、それ以外の病気の前兆や本人が「しかたない」と諦めてしまっている「日々の暮らしに潜んだ不便や危険」も見つけてあげることができるので、ぜひしっかり向き合ってみてください。
本人がなかなか決断できない「運転免許証の返納」について家族で考えるキッカケにもなるかと思います。
異変に気付いた場合、ほかの家族や医療・福祉のプロに相談しやすいようにメモをとっておきましょう(日付のわかる画像も役立ちます)
チェックリストと対応策
我が家の経験もふまえ、注目してほしい理由をもう少し詳しく説明します
室内の様子をチェック
異様に散らかったり同じものばかり購入されていないか
室内や冷蔵庫の中を見てください。
以前に比べて極端に散らかっていたり、同じものが大量に購入されている様子はないでしょうか。
あきらかにおかしい場所に収納されていたり、買ったことを忘れていないか注目です。
きれい好きだったはずなのに汚部屋になっていたら要注意。
認知症を疑われる場合は病院(精神科、心療内科、脳神経内科・外科、老年科、物忘れ外来など)や地域包括支援センターに相談してみましょう。
ゴミ出しや分別はできているか
認知機能が低下すると収集癖がでてきたり、正しい分別を行えないことがあります。
身体機能の低下によりゴミ出しが困難になった場合には「高齢者のゴミ出しをサポートする制度」を導入している自治体もありますので、お住まいの地域の役所などに相談してみてください。
薬の管理ができているか
部屋の片隅に受け取った時のままの薬袋が放置されていたり、雑に管理されていないでしょうか。
処方薬の飲み忘れが続いたり、飲んだことを忘れて飲みすぎていたら命に関わる可能性もあるので注意が必要です。
かかりつけ薬局に相談して数種類の処方薬を一包化してもらったり、カレンダー型のお薬ポケットや服薬のタイミングを通知するアイテムを導入すると大変便利です。
(我が家ではお薬カレンダーとAmazon Echo Showを導入しました)
カレンダーに違和感はないか
月替わりカレンダーはきちんとめくられているでしょうか。
そしてカレンダーに記入された文字に違和感はないでしょうか。
私の母の場合は倒れる少し前に記入したカレンダーの文字がふるえていたり、カタカナでも誤字が多いなど異常が出ていました。
家電は問題なく使用できているか
エアコンの温度調整は適切に設定されていますか。
高齢になると気温に対して鈍感になるらしいですが、リモコン操作も苦手になるせいか、びっくりするような温度設定の時があります。
リモコン操作が苦手になっている場合は高齢者向けに工夫されたモノへの変更もおすすめ。
時計やリモコンの電池がきれたまま交換できず困っていることもあるので、実家の近所にお店がない場合は念のため予備の電池も持ち帰りましょう。
季節に合わせた寝具を使えているか
リビングだけでなく、寝室なども見てみましょう。
あきらかに季節にあっていない寝具を使っている場合は認知症などで判断能力が衰えている可能性もありますが、体力的な問題で交換できていない場合もあります。
それまで問題なく運べていたものが重くてムリ!だったり、収納場所のドアが開けにくいなど、ちょっとしたことが理由で諦めていることもあるので、会話で確認しながらサポートしてあげましょう。
危険な段差や使い勝手の悪い設備はないか
築年数の古い家や後付け設備の多い家だと動線がスムーズでなかったり、段差でバランスを崩すこともあるので要注意です。
使いやすいトイレにリフォームしたり、寝室から水回り、洗濯機から物干し場などを実際に動いてみながら負担軽減策を考えてみましょう。
本人の様子をチェック
ふらついたりしていないか
高齢になると身体機能が低下しやすいため、自宅内でもケガをする可能性が高まります。
玄関やトイレ、浴室、廊下などに手すりや滑り止めの設置を検討しましょう。
(要介護・要支援の介護保険対象者なら「住宅改修」の補助金も申請できます)
賃貸でも使える工事不要のモノもあるので、ちょっとでも心配なら怪我をする前にぜひ!
高齢者の寝室がトイレから離れてる場合には移動距離を短くするための配置換えも検討してみてください。
(ベッドの位置や向きを変えたり、階段を使わなくてすむよう2階から1階に変更など)
服装に違和感はないか
季節感のおかしい服装だったり着衣に乱れがあった場合は認知症の可能性もありますが、身体が思うように動かしにくくなって衣替えや着替えが負担になっているだけの場合もあります。
高齢者が着替えやすいよう工夫された衣服やパジャマ、介護肌着なども販売されているので、もし一人で着替えることが大変そうなら、そういったモノを購入したり、少しでもラクな収納の方法を一緒に試してみてください。
収納の場所やルールが変わると一人になった時に戸惑うこともあるので、見栄えを気にしなくて良いならば引き出しなどに100均のラベルを貼って内容を書いておくのがおすすめです。
味覚に異常はなさそうか
料理の味付けは極端に変わっていないでしょうか。
認知機能や味覚が低下すると濃い味付けを好む傾向が強いようです。
「母の味」に違和感を覚えたら要注意。
味覚障害が心配な場合は耳鼻咽喉科を受診しましょう。
性格や表情に大きな変化はないか
異様に怒りっぽくなっていたり、極端に話さなくなっていたり、マナーにうるさかった人がびっくりするほど気にしなくなっているなどの変化はないでしょうか。
性格の急激な変化が気になる場合は認知症や老人性うつ病なども心配なので、様子をみて病院の受診も検討してください。
病気の前兆らしき異変がないか
手にした物を落としやすかったり言葉が出にくくなっていると病気の前兆である可能性もあります。
その他
車や車庫に傷がないか
家の中だけでなく、屋外にとめている車や車庫に傷がついていないかも見てみましょう。
傷がついていた場合には運転能力が落ちている可能性もあるので、運転免許証の返納や代替え案について家族で相談する必要があります。
庭木やペットの世話ができているか
庭や植物の手入れ、ペットの世話がきちんとできているかにも注目です。
長年の趣味への興味を失ったり、日課になっていた作業が負担になっていないでしょうか。
認知症や老人性うつ病が疑われる場合は病院(精神科、心療内科、脳神経内科・外科、老年科、物忘れ外来など)へ。
ペットの世話が難しくなっている場合は誰かが通ってサポートできるのか、もしもの時にお世話を引き継ぐことはできるのかも考える必要があります。
実家の最寄りのスーパーで買えるもの・買えない物を把握しておく
帰省時には実家でゆっくり過ごしたり一緒に出かけることが多いと思いますが、ぜひ最寄りのスーパーやコンビニ、そこで買える物・買えない物もチェックしておいてください。
田舎で小さな商店の場合は品揃えも少ないので「実家の近くで買おう」ができないことも多々あります。
運転免許証を返納した後の買い物サポートの参考にもなるので、近くで手に入る物と一緒に買い出しに行く必要がある物、通販で手配しないといけないものを把握しておきましょう。
(重いお米や日用品、ペット関連の消耗品などは帰省のタイミングにあわせて通販でまとめ買いが便利です)
認知症の可能性や介護の必要性を感じたら
「もしかして認知症?」と感じたり身体機能の低下が著しい場合、病院(精神科、心療内科、脳神経内科・外科、老年科、物忘れ外来など)の予約を取って付きそう約束をしたり、地域包括支援センターなどに相談することも検討しましょう。
「地域包括支援センター」とは
65歳以上の高齢者とその関係者が「健康や生活上の困りごと」について適切な支援を受けるための相談窓口です。
相談の時点で要介護・要支援認定を受けている必要はないので、離れて暮らす家族として「独居の高齢親が心配」「最近こんな心配なこと・危険なことがあったので介護サービスを利用したい」など電話相談することも可能です。
我が家の場合は母の入院時に認知症疑惑の父を一人にできず相談したのがきっかけで、認知症の診断や要介護の認定、介護サービスの利用につなげることができました。
とりあえず地元のどこに地域包括支援センターがあるのか、どんな介護施設があるのかは把握しておくことをおすすめします!
※自治体によっては「地域包括支援センター」ではない別称で呼ばれていることもあります。
いろんな事情で親と向き合うことに苦痛を伴ったり介護に関わりたくない場合も「地域包括支援センター」などに相談してみましょう
なにげない記録が役立つこともあります
お出かけ時や特別なシーンだけでなく自宅での何気ない日常風景を写真や動画で記録しておくと、後から見返したときに前回の帰省時との違いや異常に気づくことができます。
実家で使っている家具や家電、本人がどんな服装を好んでいるかも確認できるので、プレゼントを贈る時の参考にもなりますよ。
好みの食べ物、色やスタイル、夏でも長袖を好むなどのこだわりなど「そういえば」にいっぱい気づけます
お盆休みや年末年始の帰省時には異変を見逃さないようチェック!
頻繁に会っていても、ふとした時に「うわぁ、おばあさん(おじいさん)になったなぁ」ってびっくりするので、久々に会うとなおさらかと思います。
高齢の家族が少しでも快適に過ごせるよう、そして自分もできるだけ後悔しないよう、適切なサポートにつなげるためのチェックをしてみましょう。
オンライン帰省(ビデオ通話など)の場合でも、さりげなく背景(室内の様子)に注目してください
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